第15回 子どもといっぱいお話しましょう ?言葉は大きな力となります?

街がクリスマスのイルミネーションで彩られる季節になってきました。本屋さんでは、冬にちなんだ物語やクリスマスのお話が絵本のコーナーに並んでいます。お孫さんへのプレゼントでしょうか、熱心に絵本を選ばれている方にも出会いました。

 さて絵本といえば、お子さんに絵本を読んで聞かせているお母さんなら、思い当たることがあるかもしれません。同じお話を何回も読んで、とせがまれたことはありませんか? また、話をはしょって読み飛ばしたりすると、そうじゃないとやり直しさせられたりすることはありませんか?
幼児期は爆発的に言葉を習得している時期なので、同じ話を何回も聞いて分かることが楽しいし、言葉そのままを覚えるので、正確に読んでもらえないと違和感を感じるのです。

 3、4歳になると文字に対する興味や関心が出てくるので、看板の字が読めるようになったり自分で字を書きたがったりするようになります。このような『文字に対する敏感期』に、適切な方法で書き言葉を身につける環境を用意するのはもちろん大切なことで、モンテッソーリの園では『言語』という1つの分野として活動があります。親御さんもお子さんの文字の習得を意識されはじめるようです。しかしながら、言葉に対する関心はもっと前から始まっています。0歳のうちから『話し言葉の敏感期』は始まっているのです。

 子どもは、言葉を習得する能力を持って生まれてきます。ただし、環境の中に言葉がなければ、いくら人間の子どもとして生まれてきたからといっても、ひとりでにしゃべれるようになるわけではありません。周りに豊かな話し言葉の環境が必要なのです。
周りのことなどまだ何も分からないように見える0歳の赤ちゃんにも、お母さんは「おなか空いたのね、おっぱいにしましょうねー。」というふうに話しかけたりしますね。これもお母さんが用意してあげられる大切な言語環境です。赤ちゃんはお母さんの温もりや愛情とともに自分に向けられたメッセージをしっかり感じ取っています。たとえ今返事をしなくても、話しかけられたり家族のおしゃべりを聞いたりといった豊富な話し言葉の環境に取り巻かれていると、子どもの内面ではたくさんの言葉が吸収されていきます。そのうちに楽しいおしゃべりをしてくれることでしょう。

 人類が進化してきた道のりで、私たちの直接の祖先といわれているホモ・サピエンスが最後に生き残ったのは、言葉を操る能力を持っていたからだとも言われています。新しい進化が、考えを組み立てたり知識を伝えたりする力、すなわち言葉によってもたらされたというのは、とても大きな意味があると思います。子どもたちの中にその能力は受け継がれているのですから。

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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。

<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA Frontier  Kids Learning Centerの園長として、また2児の母としても活躍中。