第17回 「どちらを選ぶ?」と聞いてみましょう。?自分で決める体験は、生きる力を育みます?

 入園式に向かう親子連れや、真新しいランドセルを背負った子どもたちの姿を見かける頃になりました。春は門出を迎える季節ですね。親にとって、子供の成長していく姿を見るのは、とてもうれしいことです。まだまだ小さいお子さんをお持ちのご家庭でも、お二人で、こんな子に育ってほしいね、といった話をするいい機会かもしれません。

 さて、子どもたちに幸せな人生を送ってもらうために、どんなことを今してあげればいいのでしょう。

 教育の場では、生きる力を身につける、ということがさかんにいわれています。生きる力とはなにか、様々な考え方があります。なかでも「自分で考える力」は生きていくうえで土台となる大切な力です。
 この力を人格形成の基礎を作る幼児期から育てることには大きな意味があります。小さくてもそれなりの「自分で考え、判断する」機会は、いくらでもつくってあげられるのです。

 たとえば、普段の生活の中で選ぶ経験をさせましょう。今日着る洋服、履いていく靴、読んでほしい本。選択肢を二つ用意してどちらがいいか尋ねます。  洋服の場合を例にとりましょう。どちらを着ても差し支えないと思われる洋服を2着並べて「この洋服とこの洋服、どっちにする?」。子どもが「こっち」と選んだら、次にズボンを並べて同じように選んでもらいます。
 靴下も2足のうち1足が決まったら、「着ようね」と本人が自分の体を使いながら着られるように手助けをします。
 全部着終わったら全身を鏡に映して選んだ結果を見せてもいいでしょう。
 歩けるようになって手を使って自分でしたがるようになったとか、親の要求にいやというようになったとか、そんな様子が見えてきたら自我が出てきた証拠です。自分でやりたい、自分で決めたいという時期がやってきたのです。

 反抗期といわれているこの時期の子どもたちが自己主張するのは、「もう自分でできる僕を、私を認めて!」という叫びだと考えられます。
 この声に応えて子どもに選ばせる機会をつくってあげてください。自分で考え決める経験をした子どもは自尊心をもち、相手を大切にすることを学びます。
 この時期に、親が乳児期と同じようにすべてをしてあげたり、一方的に決めたりしていると、子どもが自分で行動したり考えたりする機会を奪ってしまうことにもなりかねません。
 子どもの体の深いところからほとばしり出ている「生きる力」を、いちばん身近なご家庭でうまく引き出していってあげて下さい。

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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。

<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA Frontier  Kids Learning Centerの園長として、また2児の母としても活躍中。