第6回 専業主婦、バンザイ!

 「女性の社会進出」、最近よく耳にすることばですね。女性が仕事を続けながら安心して子育てできる社会を作ろうということです。進歩的文化人といわれる人々が唱えるこのことば、ちょっと待ってという感じです。

ことばだけを聞いていると「そりゃそうだ」と思うのですが、よく考えるとおかしい。

 一体、「社会」とはどういう社会のことをいうのでしょうか。この「社会進出」と聞くと、まず頭に浮かぶのが、会社などでバリバリ仕事をしている姿、働いている女性像です。だとすると、家庭で子育てに専念しているいわゆる「専業主婦」は「社会に進出」していないのでしょうか。時代遅れの女性なのでしょうか。

 私は決してそうは思いません。というのも、「子育て」は他のどんな仕事より、生きがいとやりがいを与えてくれるすばらしい仕事だ、と考えているからです。

専業主婦もそれだけで立派に「社会に進出」していると思うのです。

 そして、あたかも専業主婦が社会に進出していないかのように錯覚させ、「私も仕事をしなければ」と思わせるような風潮は改めないと、と思っています。

 誤解のないように付け加えると、私は決して子育てと仕事を両立させている女性をダメだと言っているのではありません。だって、たとえば農業を営む家庭、それこそ昔からお父さんとお母さん、一緒に畑仕事に出かける。時には子どもを
背中におぶって、収穫したホウレンソウを洗う。

こういう家庭に「女性の社会進出」などというと、「何をいまさら」でしょう?

 一方気をつけておかなければならないのが、この「女性の社会進出」を助けるために福祉を充実させる結果、いわゆる「子育て放棄」を助長すること。

ほとんどのお母さんにはあてはまらないとは思うのですが、やはりこの危険性は知っておかなければならないと思います。
というのも、こんなことばを聞いたことがあるからです。

「世の中が、子どもを生め生め、っていうから生んだの。後はちゃんと行政が面倒みてくれなきゃ」

 これは違うと思うのです。こういう極端なことをいう人をたくさん生み出す社会であってはならない。
いつの世も「子育て」は何よりもすばらしい、自分をも育ててくれる仕事―もちろん両親にとって―であってほしいものです。

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かすが幼稚園 理事長・園長 米川安宜
京都市右京区の私立園。園長は同志社大学法学部卒業後、國學院大學で神道学、佛教大学で幼児教育を学ぶ。キリスト教、神道、仏教と三つの宗教の大学で学んだ特異な経験をもつ。「子どもは大人よりも能力が高い」という目で子どもと関わり、子どもの脳の発達にあった教育と、積極的な心構えを育てる新しい幼児教育を行っている。また、「幼児期こそ、しつけの最適期」として、しつけ・礼儀、道徳教育も重視している。 (http://www.kasuga.ed.jp/)