第15回 「小さな親切」をはじめよう

皆様、暑い日が続いておりますが、お元気でいらっしゃいますか?

暑っ苦しい毎日、何となくイラツキがちなそんな中、先だって笑っちゃうような、でも何となくほのぼの?とした光景を目の当たりにしました。
それは、仕事に行く途中での車中のできごとでした。

地下鉄に乗っていた私がぼんやりとしていると『千駄木』駅に到着したらしく、ドアが開いたなと思いながら何気にそのドアに目を向けると“いかにも”という感じの、その割には細くて小柄な『突っ張り兄ちゃん』が大股開きで乗りこんでくるのが見えました。

そしてその兄ちゃんは、ちょうど私の斜め前の空席を見つけゆっくりとその席に歩みより、大股を開き、腕を組んでどっかりと座り込みました(小柄なせいか、あまり“こわそう”ではない)。

千駄木駅からは、その後も引き続きたくさんの乗客が乗りこんできたのですが、その乗客の中の小学3年生くらいと思われる男の子とお腹の膨らんだ母親の親子連れが空席を探してキョロキョロとしはじめたのです。

するとどうでしょう、即、その兄ちゃんが母親のバックをトントンとたたき、「俺、北千住で降りるからよ」と、これまた細い身体に似つかわぬ太いダミ声で言い、席を立ち上ったではありませんか・・・・。

一瞬驚きの表情を浮かべながらも「有難うございます」と言って座り込んだ親子、その後席を譲りドアの側に立っている兄ちゃんに向かって頭を下げる母親、兄ちゃんはちょっと気分良さそうにそのまま股を開き、腕を組んで立ち続け『北千住』までその姿勢を保っていました。
そして北千住駅に着くと、ゆっくりとした足取りで降りて行ったのです。

実はその母親は、私には“ただの太目のお母さん”にしか見えなかったのですが、突っ張り兄ちゃんには『妊娠中』と思っての親切心であったのだろうと思われます。

でも、いいではありませんか、人間関係が希薄になってきている昨今、どんな理由だって優しい心が嬉しい光景でした。

突っ張り兄ちゃんにとっても、とても気持ちの良い1日だったに違いありません。

夏休み、1日に一つ、小さな親切をご家族の皆さんでできることから初めてみませんか?
お盆休みなどでお出かけの時、久し振りにお目にかかるおじいちゃまやおばあちゃまに、旅の途中で巡り合った人々に、ご近所とのお付合いの際に、ご自身の気持の持ち方一つで相手様にも自分にも心豊かな生活が送れる事は必至です。

今日も暑い1日です。

でも、とてもほほえましい、気持の良い1日でした。

あの突っ張り兄ちゃんは、明日も親切な心をお人に与えてくれるのでしょうか・・・・・。

オフィス 鎌田  代表 鎌田妙子

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元保育園園長、鎌田妙子が、今まで学んできた子育て理論や体験談などをもとに、子育ての悩みどころに対してアドバイスしていきます。毎回身近な事柄をテーマに、子育てアドバイスをお届けしていきますので是非ご覧ください。

<鎌田妙子> 1975年、北海道大学教育学部発達心理学研究室終了、認可施設 財団法人慈愛会保育園園長として9年間勤務。施設型保育の限界を超えるべく1986年独立。当時、日本では珍しいベビーシッター事業を立上げ、現在オフィス鎌田の代表として活躍中。