第5回 子供の心の栄養語2

「あなたが一番好き」
あなたの家の子どもが一人っ子じゃなくて、兄弟姉妹がいるのなら、子どもにとって誰が一番愛されているかというのは大きな関心事のひとつです。

カウンセリングで「自分に自信がない」「他人の方が自分より出来る気がする」といった問題を扱う時に「私はお兄ちゃんほど親に愛されていなかったんです」「姉のほうが可愛がられていました」といった幼児期の話を聞く事が多くあります。
もちろん「あなたよりお兄ちゃんの方が可愛い」なんて面と向かって言う親はまずいないと思います。子どもは、知らず知らずのうちにお兄ちゃんの話のほうを良く聞くようになっていたり、お姉ちゃんにばかりよく注意をしたり、といった親の態度を敏感に感じとり、「自分の方が可愛がられていないのでは」と感じるようになってしまうものなのです。
「そんな事を言っても、言う事を聞かない子には注意する事が多くなるし、仕方が無いじゃないですか」と言われるとその通りです。子供といっても、皆が同じ性格ではありません。気難しい子、かんしゃくを起こしやすい子、おとなしい子、言う事を聞かない子、よく言うことを聞く子、それぞれ子どもには個性がありますので、親が全ての子どもにいつも同じように接する事なんて出来る訳がありません。

そこで、時々その子が1人しかいないときを見計らって、その子をそっと抱きしめて「私はあなたが一番好きよ」と言ってあげてはどうでしょうか?「どっちが好きなんて言えない、私は自分の子どもを平等に愛してる」という言葉は理屈としては合っているかも知れません。でも子どもは理屈の世界では生きていないのです。今ここで自分がどう感じるかという世界で生きています。だからもう1人の子どもにも、その子が1人の時を見計らって「私はあなたが一番好き」と言うのです。それぞれの子どもに“一番好き”を言っていると、もしかすると子ども達はいつか2人で一緒にやってきて、あなたに詰め寄るかも知れません。「お母さんは僕にも弟にも“一番好き”と言ったけど、本当はどっちが好きなの。今ここではっきりして」。そこであなたは柔らかい口調でこう答えます「今ここじゃ答えられない。後で一人一人に答えるね」。そしてその子達がまた1人きりになったときにそれぞれにこう答えます。「さっきは弟がいたから言わなかったけど、本当はあなたが一番好きよ、でもこの事は2人の秘密だよ」

一番愛されているという感覚は、成長するにつれ、子どもの中で“自分は他人から受け入れられる人間だ”という自信になり、いろんなことを積極的にやっていく行動力の源になるかも知れません。そして一番愛されたという感覚は大人になった後も、子ども達を一生支えてくれる大切な性格の一部となってくれるでしょう。

   あなたの事が一番好き
   お兄ちゃんよりお姉ちゃんより
   妹より弟より
   あなたの事が一番好き
   これはあなたと私の間の秘密だよ
   あなたにとって大切な大切な秘密だよ
   でも私があなたを一番好きだということを
   これからもずっと一番好きだということを
   ずっとずっと覚えていてね