第11回 おにごっこ

子どもたちが大好きな遊びの一つに「おにごっこ」があります。

おにごっこの一番初めの形は、「まてまて遊び」などと呼ばれるものです。
まだ、ハイハイの赤ちゃんに、大人も座ったり四つ這いになって、「まてまてまて?」と追いかける振りをすると、赤ちゃんは大喜びで逃げていきます。
捕まえたときには、こちょこちょしたり、もぐもぐ食べる真似をしたりするとさらに大興奮。
また、いかにも捕まえて欲しそうに、振り返り振り返り、逃げたりして、かわいいものです。ハイハイの頃や、ヨチヨチ歩きの頃に、こんな遊びをすると、楽しく自然に運動量が増えるし、何といっても、とても良いスキンシップができるので、ぜひぜひ、やってあげて欲しいなと思います。
2歳頃から、走ることも上手になってくると、ますます子どもは追いかけっこを楽しみます。
よく、園では、「オオカミと子ヤギ(もちろん子ブタでもOK)」「ネコとネズミ」「オバケと子ども」など、簡単な役割を決めて追いかけっこを楽しんでいます。
はじめは、保育者が追いかけ、子どもは逃げるのですが、繰り返すうちに、「ぼくもオオカミやりたいな」という子が出てきたりして、オニ役が複数になっていくこともあります。
追う側、逃げる側、自分の好きな方を選んで、友達や保育者と走り回ることを楽しむのです。

3?4歳頃からは、友だち同士の「おにごっこ」もできるようになってきます。
初めは、もっと大きい子のやるのを見ていたり、真似して走ってみたり、そのうち仲間に入れてもらったりします。
この頃から、おにごっこは、「触られたらオニ」というようなルールのあるものになってきます。
ただ、走り回っていた頃から、ちょっとステップアップしていくのです。ところが、このルールが、すぐに理解できない子もいます。
わかってはいるのだけれど、いざ捕まってみると、どうしてもオニにはなりたくないという子もいます。
つかまった途端に、泣いてしまう子だっています。
みんなで楽しくやっていたおにごっこが、中断してしてしまいます。
逃げ回っていた子どもたちが「どうしたの?」「誰がおになの?」と集まってきます。
泣いている年少クラスの友達を見て、大きい子どもたちは様々な反応をします。
「捕まったら、オニになるんだよ。」と、説明する子。
「泣いたってだめだよ。決まりなんだから。」と、ルールを守らせようとする子。
「小さいんだからさ、しょうがないよ。」と、かばう子。
「これじゃあ、できないよ。さっきの、おには誰?じゃあさ、そこからやろうよ。
小さい子にはタッチしないことにしよう。」と、特別ルールを作ろうとする子。
「○○ちゃん、私の手にさわって。ぽんって、さわって。そうしたら、私がおにだから。ね。はい、さわって。」と、自分が代わってあげようとする子。
・・・・・こうすればいいという、正解はないのです。みんな、それぞれ、素晴らしい。

そして、泣いてしまった子も、それは、とても、良い経験になると思います。
「小さいから」と、許してもらった子は、いつか、自分が大きくなったとき、泣いている小さな子に優しくできる人になれるかもしれない。
どうしてもイヤで、おにごっこの仲間からはずれてしまった子は、少し離れて見てみれば、みんなおにになっても、笑って走っていることに、そのうち気づくでしょう。

私も、保育者になりたての頃は、ルールは守らなければ。自分だけおににならないなんて、わがままな子だなんて、思ったものです。でも、周りの子どもたちの様子を見ていると、そんなにカリカリすることではないんだなと、思えるようになりました。
子どもたちは、案外、臨機応変で、寛大で、遊びは、なるように流れていのです。
泣いていた子も、卒園するまで、ずーっとおにができなくて泣いてるなんてことはなく、友だちを見ながら、どこかでできるようになっていくのです。

たかが「おにごっこ」、されど「おにごっこ」。
子どもたちの心も体も、たくましくしてくれる、なかなか侮れない遊びの一つです。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」:http://yukkotoy.com/