第2回 「運動の敏感期」について ?子どもの困った行動、それは「敏感期」の現れかもしれません?

 幼児期と呼ばれる6歳ころまでの時期、子どもには、抑えがたいほど強い感受性が現れます。これを「敏感期」と呼び、引き起こされた行動はおとながびっくりするほどの集中力をもち、没頭するほどの強いエネルギーを秘めています。

 お子さんとの生活の中で、何か静かだなあと思ったら子ども部屋の一番下の引き出しから洋服を全部引っ張り出していたとか、台所で下の棚からタッパーを取り出してふたを開けるのに夢中になっていたとかいう経験はありませんか。

 これは、お子さんが自分にとってもっとも必要なものを環境の中に見つけて、エネルギーを燃え上がらせ関わり始めた姿なのです。もっとも必要なものが洋服?タッパー? いえいえそうではありません。ここで言うもっとも必要なものとは「動き」です。手や腕を使ってものを引っ張る動き、あるいは指先を使ってものを開ける動きがしたいという内面からの欲求の現れ、すなわち「運動の敏感期」が訪れた姿なのです。

 この場合の「運動」には、寝返りやハイハイ、立つ、歩く、走る、などの体全体を使った大きな動きから、わざと縁石の上を歩きたがるとか重いものを運びたがるといったバランスが必要とされる少し高度な動きまで、さまざまな「運動」が含まれます。また引き出しを開けるなどの手や腕を使う動きや、糸屑をつまんだり隙間に物を詰め込んだりする指先の細かい動きも、幼児期に子どもが好んで行う「運動」です。

 子どもは、その脳の発達に伴って階段を一段一段上っていくように動きを習得していきます。動きに関わる必要なものを環境の中から選び取ってそれぞれの機能を充分に発達させていくのです。親の都合とはおかまいなしに動き回ったり、歩きたがったりする背景には、実は「運動の敏感期」という自然の法則が存在しています。

 子育てをしているお母さん、お父さんは、このような乳幼児期特有の行動や感受性をふまえて、お子さんを観察してみてください。この時期の不思議な行動の意味を理解し見守る、さらには観察によって、この敏感期に対応する環境、子どもが集中して活動に没頭できる環境を作るというのが、モンテッソーリの考え方です。子どもの「敏感期」に気づいたお母さん、お父さんはきっとそれまでより子育てが楽しくなるのではないでしょうか。

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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。

<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA Frontier  Kids Learning Centerの園長として、また2児の母としても活躍中。