第11回 「たいくつを楽しむゆとり」

ALOHA! 日本では紫陽花の美しい季節になりますね。雨に濡れた紫陽花の花とその葉に乗っているカエルは、日本のカレンダーの6月の代表的な絵ですね。懐かしく思い出します。この紫陽花、実は日本からシーボルトがオランダに持ち帰り品質改良されて日本に逆輸入されたとも言われております。ヨーロッパにも、ハワイにも似た花がありますが、雨と紫陽花が結びつくのはやはり日本の気候風土が生み出したイメージのようです。

さてこちらハワイでは、ゴールデンシャワーと呼ばれるマメ科の木に見事な黄色い花房が咲き誇る時期です。このゴールデンシャワー、和名はナンバンサイチカと呼ばれていますが、ハワイでは黄色だけでなくオレンジや白の花もあります。風に吹かれてこの花が散る光景は、まるで日本の桜吹雪。こちらの表現では、まさにシャワーを浴びるような気分にさせられるのでこのような名前がついたようです。

昨日大変ショッキングなニュースが日本から届きました。小学生6年生女児による友人殺害が学校内で起こったニュースです。日本の教育関係者は、度重なる児童による凶悪事件の度に色々と対策し関係者の指導をしているようですが、やはり社会の本質的問題が解決されないまま上辺だけの対策や指導には限度があります。教育には、家庭教育、学校教育、社会教育があるのですが、日本において家庭教育がおろそかになってきたのはやはりバブル経済の発展期からのようです。

父親を仕事にとられた家庭で、母親だけの家庭教育がゆがんでしまうのは当然です。時間の問題ではなく精神的に父親の存在が子どもに伝えられていればまだ良いのですが、逆に母親さえもパートの時間にとられ、子どもには塾やら習い事のフルスケジュールを与えて子どもを管理するといった、家庭教育不在の時代があったのです。そしてその時代は、今でも日本社会(正確には日本のみならず、急速な経済発展社会では常に弱者―子どもや老人―が犠牲になります。)にもまだその影が深く残っていると思います。

ハワイに来てある会社でマネージャーの仕事に私が付いてから10年になりますが、英語でマネージ(MANAGE)をする人と呼ばれて初めて私の意識の中にマネージの観念が植え付けられました。

MANAGEとは管理することなのですが、日本語だと管理者となってなんだかふんぞり返っているようなイメージですが、英語だと自分がコントロールできる状態に物事を持ってゆくとなります。ですから職場ですと、人材の確保と教育、経費の収支、経営がスムーズにゆくように設備の点検から日々の業務運営を支障なく遂行するための必要な事項の管理を管理者としての責任の基に管理しなくてはなりません。つまりなんでも屋です。しかも決められた時間内に行なうのですから時間の管理、又自己の健康管理も必要です。こうなると、管理されない自分の時間と空間の必要性が生まれ、その時間と空間を確保する知恵も付いてきます。

子どもの頃は、この管理の概念が全く無く、何もすることが無い時間を「つまらない」とか「たいくつだ」とか言って遊び相手を捜したり、からかってくれる相手を家族(私は大家族の家庭に育ちました)の中に求めたり、それでも誰も見つからないと自然の中に自分を置いて時を過ごしたものです。流れる雲の形をボケーとしながら眺めたり、庭の蟻の動きを飽きもせずに見つめたり、流れる川のきらめきに心を奪われたり、日溜りでごろっとしながらうとうとしたり、、、、こういう時間や空間は子どもの時の特権だっかのかしら、それともその時代の生活の一部だったのかしら、、、、、、、。

いや、今でもちゃんとあるのです。管理されない時間や空間の中に自分を置くその心地良さは「ゆとり」と呼ばれるようになりました。

変化の激しい現代社会で多くの人を管理するのに、つい合理性のみを優先した管理方法が選ばれがちです。でも人間の心や気持ちはそんな単純に合理的に割り切れるようなものではないのですよね。それゆえ、家庭教育が変化の激しい時代こそより重要になってくるのです。

家庭での教育は、人間管理の教育ではなくむしろ脱管理教育であるべきです。社会の集団生活の中で管理され拘束されている人としての心や気持ちを開放できる場が、家庭であって欲しいのです。つまり、父親母親という全く異なる性の狭間でも、又親と子どもの年代の狭間でも、お互いに認め合い必要となる自分の存在を確認できるところが家庭なのです。

ですから、脱管理教育は「甘やかすこと」とは、まったく異なりますし、又「躾」は管理とは異なり良き生活習慣を子どもにつけさせるために親が家庭で
教える必要があります。厳しく躾けていても、親の愛情が伝わっていれば、子どもは不安なく成長します。家庭における自分の必要性はあるがままの自分を受け入れてくれるということでから、家族間でお互いの自我がぶつかり合うのは当然です。それにも関わらず、お互いが必要になり認め合えるところに家族の絆があり愛情が育まれてゆくはずです。

お父さん、お母さん、職場や社会では管理されたり管理したりする人であっても、家庭では管理者ではなく父親母親となって外で管理されて疲れている子ども達に「ゆとり」をあげてください。家族揃った時間がとれたら、なにも人ごみの中に出掛けなくても家族揃って退屈な時間を楽しんではいかがですか?お金を使わなくても良いし、時間に振り回されなくても良いし、、これ以上大人にとってリラックス出来ることはありません。

子ども達ですか?始めは文句をいうかもしれませんが、親たちが自分に向き合ってくれると解れば結構喜んで従うはずですよ。家族揃って庭で食事をするとか、キャンプごっこをするとか、いつもとは異なる生活のリズムを家庭の中に起してみてください。そういうときのお父さん、お母さんの話(失敗談とか、子ども時の思い出とか、自分の親の思い出とか)を幼稚園児であっても子どもは真剣に聞いているものです。そして、生涯覚えています。
       
ノブコ タカハシ ムーア
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アメリカにある唯一の宮殿
大統領制度のあるアメリカに本物の宮殿があるのをご存知ですか?アメリカ国民の中にはハワイ州がアメリカ合衆国の一部であることを知らない人もいるくらいですから、日本の皆様が「アメリカに宮殿?」と思われても不思議はありません。
アメリカにある唯一の宮殿は、ここハワイ州のホノルルのダウンタウンにあります。カメハメハ大王がハワイ諸島を統一し王朝を成立させましたが、その後今から約100年前にカラカウア王が建てたイオラニ宮殿がそれです。煌びやかな宮殿ではありませんが、質素な中にもハワイらしい趣のある宮殿です。ハワイに来られたら是非イオラニ宮殿の見学ツアーにも参加して、ありし日のハワイ王朝を偲んでみて下さい。
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多民族社会ハワイから異文化理解に役立つ情報を発信している スクール ハウス インターナショナルの運営者です。異民族間 結婚の家庭で育つお子さんの生活環境、多民族化がすすむ日本社会 で国際人教育を必要とされている日本の子どもたちの家庭環境を 一日も早く整えるために、自分の体験に基ついて語ります。 ご参考にしていただければ、大変嬉しいです。

<ノブコ タカハシ ムーア>
関東学院女子短期大学英文科卒業後、デンマークのInternational Peoples’ College で 23カ国の学生と共同生活をしながら、国際理解、国際平和を学ぶ。帰国後 民間ユネスコ活動に出会い以来30年間日本社会の国際化の最先端で様々な 国際交流プログラムを企画実施する。1993年3人の子どもたちの学校教育の為 ハワイに移民。同年それまでの体験をまとめた「集まれ!地球の子ども達」を出版。 School House International のホームページはこちら>>