第10回 子どもがひとまわり大きくなる時 ?活動のプロセスが心を成長させます?

 お子さんを育ててこられた中で、子どもがぐんと成長したと感じられるときはどんなときだったでしょうか。毎日毎日寝返りをしようとがんばっていた子がある日を境に難なくできるようになった。食べさせようとする親の手を「自分でする」とばかりに払いのけて手づかみで食べていた子が、スプーンを使わせているうちに上手にすくって食べられるようになった。何もできない状態で生まれてから今までのお子さんの成長には目を見張るものがあったはずです。

 人間がひとまわり成長するときには、次のような過程を経ていくという特徴があげられます。

 ? 自分の意思で取り組む。
 ? 選んで始めたものに一生懸命関わる。何回も繰り返したり、難しくても投げ出さずに集中して関わる。
 ? 乗り越えたことで、達成感を味わい自信をもつ。

 このような経験をすると、不思議と心が安定し、積極的になり、人に優しくすることができるようになります。これは幼い子どもだけではありません。心が荒れて粗暴な振る舞いをするようになってしまった子も、自分で自信を持てるまで活動をやり遂げ、深い充実感を味わったときに変わっていくということがいわれています。

 「初めてのおつかい」という番組をご存知でしょうか。小さい子どもが頼まれたおつかいを自分の力でやり遂げる姿を見守る番組です。困難に出会っても誰に頼ることもできない状況の中、子どもは懸命に自分の力で乗り越えます。これはまさに先にあげた過程を経て、子どもたちが精神的にたくましくなった姿を見せてくれる例です。

 このような「自分の成長のための仕事」ともいえる過程がモンテッソーリ教育の中でも用意されています。子どもが自分で仕事を選び、集中して関わることで達成感を味わう。この経験をつむことで、自分のことができるようになるというだけでなく、もっと深いところで子どもは成長を遂げます。調和の取れた、人に思いやりの心をもつことができる人になっていくのです。

 ご家庭でお子さんの活動を見るときも、このプロセスを大切にしてあげてください。できた、という結果だけが大事なのではありません。過程が心を育んでいるのです。

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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。

<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA Frontier  Kids Learning Centerの園長として、また2児の母としても活躍中。