第18回 自由と規律

 私はある会で、世界的脳神経外科の権威の先生とご一緒させていただいています。

 先週の木曜日、偶然、会合で隣に座らせていただいたので、常々疑問に思っていたことについてご教示いただきました。

 まず、いつも皆様にお話ししている、「脳の発達曲線」のグラフについて尋ねました。

 私は、

「『0から6歳ごろまでに、脳の基礎的な配線は、その90%を終える。このため、幼児期はとても大切な時期だ』と考えています。いかがでしょうか?」

との問いに、先生のお答えは、「その通りですよ」。

 そこで、「ところが、先生、最近『3歳児神話』は崩れた、などと言う人がいますが、これはどうなのでしょう?」と尋ねました。

すると先生は、「4歳ごろまでが大切な時期なので、それはおかしいよ」と教えてくださいました。

 話は自由・個性・権利尊重教育の現状とその非現実性に及び、いろいろとご教授いただきました。

 たとえばご両親が、「幼児期は自由に育てることが大事」と子育てをなさっているとしましょう。そう主張される方に、私はこう尋ねています。

「それは結構なことですね…。では、子どもが赤信号を無視して、『自由』に渡ろうとしたら、どうされますか?」

 今まで、それでも自由に渡らせる、と答えられた方にであったことはありません。つまり、いつも申し上げている通り、「自由には規律」が、
「個性には基本」が、「権利には義務」が伴う、それを無意識にはご存知なのです。

 しつけや礼儀作法、社会的基本ルールは、自由を保護・保障するための最低限の規律です。

 それを「押し付け」と排除するのは、はなからおかしいことなのです。

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かすが幼稚園 理事長・園長 米川安宜
京都市右京区の私立園。園長は同志社大学法学部卒業後、國學院大學で神道学、佛教大学で幼児教育を学ぶ。キリスト教、神道、仏教と三つの宗教の大学で学んだ特異な経験をもつ。「子どもは大人よりも能力が高い」という目で子どもと関わり、子どもの脳の発達にあった教育と、積極的な心構えを育てる新しい幼児教育を行っている。また、「幼児期こそ、しつけの最適期」として、しつけ・礼儀、道徳教育も重視している。 (http://www.kasuga.ed.jp/)