第4回 いじめや自殺をなくすために、今私たちができること

 昨今の教育現場でのいじめや自殺の報道には、本当に心が痛みます。
 たとえ勉強やスポーツがよくできても、思いやりのある優しい子に育っても、命を絶つようなところまで追い込まれてしまうのでは、どのように子どもを育てていったらいいのか不安に思われている親御さんもたくさんいらっしゃると思います。

 未来ある子どもたちのために、私達大人は何ができるのでしょう。
 私は、子どもが幼いうちから、周りの人や自分を大切にすることを、もっと伝えていく必要があると思います。小さい子がそれと知らずに人を傷つけることをしたり言ったりした時、身近にいる大人がそれを見逃さないでいただきたいのです。

 先日、こんなことがありました。静かに遊んでいるAちゃんの傍で遊んでいたBちゃんが、いきなりAちゃんをつねったのです。Aちゃんはびっくりして今にも泣きそう・・・。
 それを見ていた先生は、「そういうことをしちゃいけない! Aちゃんは痛かったんだよ。」と叱りました。「痛い思いをさせたんだから、Aちゃんに謝らなくてはいけません。」とBちゃんに「ごめんなさい」を言わせた後、先生は、何にも言えないままだったAちゃんに、Bちゃんに向かって「もう、しないでね。」と言わせました。
 それまで子どもたちの様子を見ていた先生は、Aちゃんの関心を引きたくてつねるという形になったのだろうと推察したので、「仲よくなりたかったら、『僕の作ったの、見て』とか『いっしょに遊ぼう』とか、口で伝えましょう」と、Bちゃんには、自分の気持ちの適切な表し方をアドバイスしました。Aちゃんにも「痛かったね。いやなことをされたら『やめて』と言っていいのよ」と話しました。

 子どもたちにとっては、何かトラブルがあった時こそが学ぶチャンスです。
 行為の原因がどこにあるのか、そのときの状況によって対応は違ってくると思いますが、子どもたちには「やられたらやり返せ」ではなく、言ってはいけないことや人にしてはいけないこと、自分の気持ちの適切な伝え方を、どうぞ教えていただきたいと思います。

 「日常の生活」という毎日の小さな積み重ねの中で、子どもたちは育っていきます。人格が形成される幼児期にこそ、その中で大事なことを皆さんが伝えていってほしいと願っています。

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WASEDA Frontier Kids Learning Centerアドバイザー野村謡子が園での保育経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。家庭で活かせる「モンテッソーリの子どもの見方」をお伝えしていきます。

野村謡子<のむらようこ>
青山学院大学卒。息子の「子どもの家」入園をきっかけに、モンテッソーリ教育に出会う。教師のディプロマを取得後、モンテッソーリ園に12年勤務。現在も WASEDA Frontier Kidsアドバイザーをはじめ、多岐にわたりモンテッソーリ教育に携わる。