第3回 子どもにかける想い

 子育てをしていると、どうしてこの子は思うように育ってくれないんだろう、と思うことはありませんか。
 公園から帰る時間なのにまだ遊びたいと言って駄々をこねて困るとか、自分がやりたいと絶対譲らないので手を焼いているの、というお母さんもいれば、お友だちの中に入ると引っ込み思案で従ってばかりいる、見ていてはがゆくなってしまう、というお母さんもいるでしょう。いろいろ教えてもちっともできるようにならないから、いらいらしてしまう。どうしたらいいんでしょう。という方もいらっしゃることと思います。でも、ちょっと考えてみましょう。あなたの子どもだけれど、悲しい哉あなたの思う通りには動いてくれません。小さいけれど、別の一人の人間なのです。

 あなたが産み育てているお子さんは、生まれてしばらくの間は夜も昼もなく世話をしてもらったことでしょう。あなたが自分のことは後回しにし、お子さんの具合が悪くなったといえば病院に急ぎ、あるいは仕事を休み、お誕生日を祝い献身的に愛情を注いだ、のにもかかわらず、思う通りになってくれるわけではありません。小さな恋人に裏切られた気分です。でも小さいけれど、いえおなかの中にいる頃からすでに、一人の別個の人格を持った存在だということに気づいてほしい、というサインかもしれませんね。

 大抵のお母さんは、子どもが1歳半を過ぎる頃から自己主張を始めたり、いやと言って聞かなくなってきたり、といった経験をお持ちになると思います。
 それは、子どもが自立して生きていくための大切な準備です。
 順調に大きくなって行く時に必ず通る道、少しの間付き合ってあげてください。とはいえ、言いなりになるのとはちょっと違います。子どもに、自分で決めたり考えたりするチャンスを与えるのです。
 初めの例でいえば、時計を見せて予め帰る時間の約束をしておく、とかやり方をゆっくり見せて、自分でしやすいものを用意するとか、子どもの主張や要求を、受けとめたうえで対応する気持ちのゆとりが持てるといいですね。
 一人の人間として認められている、という感覚は小さな子どもにもわかります。自分や相手を大切にする心もその中から育まれていくことでしょう。

 日常の中で、口の出しすぎ手の出しすぎは、子どもの自主性や自信をつけるチャンスを奪ってしまいかねません。愛する子どもだからこそ、自立する精神を大事に育てていってあげてください。

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WASEDA Frontier Kids Learning Centerアドバイザー野村謡子が園での保育経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。家庭で活かせる「モンテッソーリの子どもの見方」をお伝えしていきます。

野村謡子<のむらようこ>
青山学院大学卒。息子の「子どもの家」入園をきっかけに、モンテッソーリ教育に出会う。教師のディプロマを取得後、モンテッソーリ園に12年勤務。現在も WASEDA Frontier Kidsアドバイザーをはじめ、多岐にわたりモンテッソーリ教育に携わる。