第31回 「多民族化する日本社会の子ども達」

ALOHA! 雨季のハワイですが、雨は降らずに日本の梅雨のようなうっとおしい曇り空が続いています。日本も全国的に温度差の激しい不安定な気候の冬ですね。

日本からまたまたショッキングな事件のニュースが届きました。幼稚園児が、安全の為に幼稚園に車で送られるその車中で、送迎の当番であった同じ幼稚園児の母親から殺害されるとは、、、、一体誰を信頼したら良いのか解らなくなります。可愛い盛りのお子様を亡くされた親御さん達の悔しさは、海より深いことでしょう。亡くなられたお子様達のご冥福を祈ると共に、親御さん達の心の痛みに心よりご同情申し上げます。

長い間単一民族と信じられていた日本社会ですが、約30年前私が欧州留学から帰国して民間ユネスコ活動を始めたとき調べた資料では、日本で外国人登録をしている人達の国籍は韓国・朝鮮と中国の人達が圧倒的多数でした。その人達の多くが、当時は日本名を名乗り日本語を話していたので、良いにつけ悪いにつけ、周囲からは外国人あつかいを受けていなかったようです。私が欧州に留学していた当時、ヨーロッパ諸国は外国人労働者をアラブ諸国やアフリカ諸国から受け入れ始めました。日本も10年ほど遅れて、外国人労働者を受け入れるようになり、とりわけ中南米の日系人には率先して労働ビザを給与いたしました。日本人で国際結婚(英語では異民族間結婚と表現する)をする人も急増し、それまでは日本女性と諸外国国籍男性の結婚が多かったのに、20年ほど前からは日本男性と諸外国国籍女性(特にアジア諸国の国籍)の結婚が多くなりました。当然複合文化の生活環境で生まれ育っている子どもの数は増え、彼ら二世が社会に物申す年頃に成長してゆきます。こういう社会の大きな時代の流れにも関わらず、日本は単一民族の国と思い込んでいる人達もまだまだ多くいるようです。

私がハワイに移民する直前に出版した「集まれ!地球の子ども達」(新評論出版)http://www.shihawaii.com は、日本で自分の子どもを育てた1980年代に垣間見られたいくつかの事例や自分自身の体験を通して、遠からずやってくる日本社会の多民族化をいかにして一人一人が迎えたら良いのか私なりの助言をまとめました。「自他共に、異なることを恐れずに、異質性としっかりと向き合える人」でないと、これからの国際社会には生きてゆけません。その為には、大人自ら子どもにそういう姿勢を示さないと、異質なことを恥じたり、異質なことをねたんだり、異質なことを無視する人に子どもは成長してしまいます。ハワイに来てから私は、皆様にご紹介したい児童書を探しておりますが、「異質な人、異質な文化・生活習慣」をいかに理解し受け入れるかは、移民の国アメリカにおいても重要なテーマとなっています。違いを知るだけではなく、さらに一歩すすめて何故異なるのかを理解する、理解できたらその違いを尊重した上で、その人の言動を理解するといった順で異文化理解が達せられますが、無論その過程においてはコミュニケーションが不可欠です。

日本の多くの地域社会が今では、複数の異なる生活文化を持った人達と共同体を形成しています。と言う事は、外見が異なっていても日本語が良く解り、あなたと友人の車中での日本語会話を聞いている人がいるかも知れません。外見の異なる人が公共乗り物や公共の場所であなたの隣の席に座り、あなたに挨拶するかも知れません。それに、日本語が喋れない人から、いつ何時あなたが助けてもらうことがあるかも知れないのです。

今回の悲惨な事件で逮捕された女性は、6年半前に中国から日本に来て日本男性と結婚し5歳の女の子の母親でした。彼女の犯行にいたる経緯が、目下様々と調査されていますが、いかなる事情があったにせよこの許しがたい事件から、私たちは何を学べば良いのでしょうか? 人が信じられなくなったら、信じられなくなった人本人が精神障害を起こします。子ども達を取り巻く人達に不信感を抱くよりも、その人達とコミュニケーションを良くとるようにして風通しを良くしておかないと、子ども達の生活圏が益々狭められてしまいます。お母様、お父様、大人の不安を子ども達に押し付けないように、どうぞお子さん達と充分にコミュニケーションをして下さい。そして、お子さんを取り巻く大人達とも、これからはより一層コミュニケーションを図って下さいね。
           
ノブコ タカハシ ムーア

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ザトウクジラ
ハワイの冬(雨季)は、ホエール・ウオッチングのシーズンでもあります。
鯨の仲間でも大きくて頭のところにいくつものコブがあるザトウクジラ(英語名はハンプバッグ・ホエールで「猫背の鯨」の意味)が、アラスカの冬を避けてハワイに南下してくるからです。餌の豊富なアラスカ近海で夏を過ごしたザトウクジラは、暖かいハワイの海で交尾、出産、子育てをするのだそうです。
ハワイに来ると雄の鯨が歌を歌うそうですが、これは求愛の為の歌と解釈されています。マウイ島近海に多くの群れが集まりますが、オアフ島ならワイキキの沖合いから続いてサンデービーチの沖合いにもやって来ます。海上に勢い良く飛び上がるザトウクジラを見ようと、望遠鏡をもった観光客が海岸に連なります。
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