第1回 防犯の基本

防犯診断士や防犯リーダーを指導・養成している日本防犯診断士協会常務理事で防犯コンサルタントの中山 天(たかし)です。

 子どもたちが襲われて、むざんな被害をうける事件が続発しています。そして、もっと深刻なことは、このような悲しい、悔しい事件がこれからも続くということです。
 その理由などを述べると、専門的な難しい解説になってしまいます。ここでは、子どもをお持ちのお母さまがたが「子どもをどうすれば守れるのか」ということに役立つようなお話をしてみたいとおもいます。
 どのような学習にも基本や定義があるように、防犯にも基本があります。そして最も大事なのがこの基本です。今回はその基本をわかりやすくお話します。

 近所に、病院に通院する母子がいました。男の子は小学校の低学年です。母子はそれぞれの自転車で通院していました。この母親は、信号が「青」になると、まわりにいる人びとが驚くほどの大きな声で「GO」と叫んで交差点を渡ります。この号令を聞いた男の子も、母親にならって「GO」と復唱しながら一目散に交差点を渡るのです。そして、信号が赤だと「STOP」といって止まります。その大きな声とメリハリのある行動で、近所では「元気のいい母子」ということで、とても有名でした。

 ある日のことです。交差点で信号が「青」に変わりました。自転車にのった男の子は、いつものように「GO」と大きな声をだして交差点をわたりはじめました。そこへ、信号無視の大型トラックが突っ込んできたのです。
 男の子は即死でした。トラックの運転手のわきみ運転が原因でした。
 信号が「青」ならわたって、「黄」なら注意、「赤」なら止まれぐらいのことはだれでも知っているルール(法律)です。では、なぜ、この男の子はルールを守っていたのに、尊い命を奪われることになったのでしょうか。
 運転手が悪い、そのとおりです。運転手が悪いに決まっています。それでは、もし、あなたやあなたの家族が被害者だとしたら、相手が悪いのだからしょうがないとあきらめますか?それで納得できますか?信号が「青」でも、車は必ず止まるとは限りません。わき見運転やいねむり運転、飲酒運転やよっぱらい運転、スピードのだしすぎや自動車の欠陥など、状況しだいで信号が「青」でもけっして安全ではないはずです。
 信号が「青」なら安全だと信じて交差点で命をなくした男の子に、自分は何も悪いことしていない、正しいことをしている。それでどうして被害を受けなければならないのかと自問自答する、多くの犯罪被害者やその家族のかたがの無念さ、悔しさがだぶってみえます。

 実は、自分や家族の生命や身体、財産を守るための防犯の基本というのは、「ルール」や「法律」を知ることではありません。
信号が青であっても、交差点に侵入してくる「車」に「危ない!」と感じれば、わたってはいけないのと同じように、自分が危ない、怖い、おかしい、変だ、いやだと感じたら、その場から離れる、遠ざかる、近づかないという行動ができなければならないのです。しかし、ほとんどの子どもは、何が危ないのか、なぜ危ないのか、どう危ないのかという、危険を察知するための知識がまったく備わっていないません。だから、簡単に犯罪に巻き込まれてしまうことになります。
 子どもたちが、とても簡単に犯罪に巻き込まれてしまのは、このような基本的な防犯の知識、何が危ないのか、なぜ危ないのか、どう危ないのかということをまったく知らないからです。知らなければ避けようがありません。さらに、抵抗力(体力)もありません。被害を避ける技術も知識も体力もないのです。だから、これからも子どもたちが犯罪に巻き込まれてしまうケースが、もっと増えることになると冒頭に申し上げたのです。

 もうひとつ問題なのは、子どもを保護し、指導する責任のある保護者や学校関係者の多くが防犯の基本的な知識すら備えていないことです。知らないものを教えることなどできるはずがありません。さらにくわえれば、防犯の指導方法すらわかっていない保護者や関係者が少なくありません。自分の子どもを守りたければ、基本的な防犯の知識と指導の要点ぐらいは学習することです。なぜなら、子どもの防犯の基本とは
1、保護者や関係者が、犯罪被害回避に役立つ知識を身につける。
2、小2までの子どもは身辺の保護が不可欠である。
3、小3までに、子どもたちの身につくように、被害回避に役立つ行動や習慣、生活ができるように、効果のある指導を行なう」ことだからです。

 現代社会は、子どもたちを(特に女児、女子を)狙う大人たち(その多くは男)が少なからず存在しています。しかも、現在の日本は、このような子どもたちを狙う犯罪者に対して、有効な抑止力がなにひとつ整備されていません。逆に、犯罪者をかばうような、援護するような風潮さえあるのです。
 そのような危ない社会の中で、子どもを守るために役立つことを何もしない、していないというのは無責任としかいいようがありません。
 ちょっと厳しい話になってしまってすみません。でも、この文をお読みのかたは違います。なぜなら、何とかしたいという気持ちをもっていらっしゃるからです。
そのような、あなたのために 次回は、子ども犯罪被害者にしないためには、保護者や関係者は何を学べばいいのか、どのように教えればいいのかということについてお話しをしてみたいと思います。
 今回はここまでにしておきます。

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・防犯コンサルタント
・日本防犯診断士協会 常務理事

<中山 天(たかし)>
1948年 熊本県生まれ
1977年 東京出版株式会社 常務取締役就任
1982年 東京出版株式会社 代表取締役就任
1999年 社業のかたわら続けてきた自力防犯・犯罪被害の回避力に 関する研究を実践するために会社を自主閉鎖(2006年5 ~6月には再建の予定)日本防犯診断士協会の設立準備を開始
2003年 特定非営利活動法人 日本防犯診断士協会設立 常務理事就任
総合防犯コンサルタントとして、防犯診断士 (防犯コンサルタント)の指導・育成、著述、各種防犯セミナーの講演 などを主な活動としている。
http://www.bouhanshindan.npo-jp.net