Category Archives: ゆっこせんせいのおもちゃ箱

第11回 おにごっこ

子どもたちが大好きな遊びの一つに「おにごっこ」があります。

おにごっこの一番初めの形は、「まてまて遊び」などと呼ばれるものです。
まだ、ハイハイの赤ちゃんに、大人も座ったり四つ這いになって、「まてまてまて?」と追いかける振りをすると、赤ちゃんは大喜びで逃げていきます。
捕まえたときには、こちょこちょしたり、もぐもぐ食べる真似をしたりするとさらに大興奮。
また、いかにも捕まえて欲しそうに、振り返り振り返り、逃げたりして、かわいいものです。ハイハイの頃や、ヨチヨチ歩きの頃に、こんな遊びをすると、楽しく自然に運動量が増えるし、何といっても、とても良いスキンシップができるので、ぜひぜひ、やってあげて欲しいなと思います。
2歳頃から、走ることも上手になってくると、ますます子どもは追いかけっこを楽しみます。
よく、園では、「オオカミと子ヤギ(もちろん子ブタでもOK)」「ネコとネズミ」「オバケと子ども」など、簡単な役割を決めて追いかけっこを楽しんでいます。
はじめは、保育者が追いかけ、子どもは逃げるのですが、繰り返すうちに、「ぼくもオオカミやりたいな」という子が出てきたりして、オニ役が複数になっていくこともあります。
追う側、逃げる側、自分の好きな方を選んで、友達や保育者と走り回ることを楽しむのです。

3?4歳頃からは、友だち同士の「おにごっこ」もできるようになってきます。
初めは、もっと大きい子のやるのを見ていたり、真似して走ってみたり、そのうち仲間に入れてもらったりします。
この頃から、おにごっこは、「触られたらオニ」というようなルールのあるものになってきます。
ただ、走り回っていた頃から、ちょっとステップアップしていくのです。ところが、このルールが、すぐに理解できない子もいます。
わかってはいるのだけれど、いざ捕まってみると、どうしてもオニにはなりたくないという子もいます。
つかまった途端に、泣いてしまう子だっています。
みんなで楽しくやっていたおにごっこが、中断してしてしまいます。
逃げ回っていた子どもたちが「どうしたの?」「誰がおになの?」と集まってきます。
泣いている年少クラスの友達を見て、大きい子どもたちは様々な反応をします。
「捕まったら、オニになるんだよ。」と、説明する子。
「泣いたってだめだよ。決まりなんだから。」と、ルールを守らせようとする子。
「小さいんだからさ、しょうがないよ。」と、かばう子。
「これじゃあ、できないよ。さっきの、おには誰?じゃあさ、そこからやろうよ。
小さい子にはタッチしないことにしよう。」と、特別ルールを作ろうとする子。
「○○ちゃん、私の手にさわって。ぽんって、さわって。そうしたら、私がおにだから。ね。はい、さわって。」と、自分が代わってあげようとする子。
・・・・・こうすればいいという、正解はないのです。みんな、それぞれ、素晴らしい。

そして、泣いてしまった子も、それは、とても、良い経験になると思います。
「小さいから」と、許してもらった子は、いつか、自分が大きくなったとき、泣いている小さな子に優しくできる人になれるかもしれない。
どうしてもイヤで、おにごっこの仲間からはずれてしまった子は、少し離れて見てみれば、みんなおにになっても、笑って走っていることに、そのうち気づくでしょう。

私も、保育者になりたての頃は、ルールは守らなければ。自分だけおににならないなんて、わがままな子だなんて、思ったものです。でも、周りの子どもたちの様子を見ていると、そんなにカリカリすることではないんだなと、思えるようになりました。
子どもたちは、案外、臨機応変で、寛大で、遊びは、なるように流れていのです。
泣いていた子も、卒園するまで、ずーっとおにができなくて泣いてるなんてことはなく、友だちを見ながら、どこかでできるようになっていくのです。

たかが「おにごっこ」、されど「おにごっこ」。
子どもたちの心も体も、たくましくしてくれる、なかなか侮れない遊びの一つです。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」:http://yukkotoy.com/

第10回 子どもとおもちゃ

私は、私立保育園に12年ほど勤めた後、現在は、オリジナルの布おもちゃを作っています。

現役時代も、軍手人形やままごと用のバッグなど、時々作っていたのですが、やはり、日々の保育やその準備に追われる毎日で、プラスαの仕事は、なかなか、はかどらなかったものです。
退職後、時間に余裕ができると、自然と布のおもちゃを次々作っていました。
現在40余のおもちゃをHP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」で紹介しています。
子育て中のお母さん方や、保育の現場にいる方に、気軽に作っていただきたくて、簡単ではありますが、作り方も載せています。

布おもちゃというと、赤ちゃん用という印象があるかもしれません。
確かに私のおもちゃにも、0歳向けのものも多くあります。
でも、発達に応じていろいろな成長段階で楽しめるおもちゃも作っています。

2歳前後からは、ボタンやスナップを使ったおもちゃや、ひも通し遊び(布で作ったリングにひもを通して遊ぶもの)ができるものなどがあります。この時期は、ちょうど指先の機能が発達し始める頃なので、こんな遊びに、子どもたちは夢中
になるのです。

幼児向けのものもあります。
今までのコラムでも、お話してきましたが、友だちとの「ごっこ遊び」が盛んになる時期なので、それを助けるようなおもちゃ・小道具を作ってみました。
エプロン・人形用おんぶひも・人形用お布団・バッグ・お財布・ティアラなどなど。
また、レースやサテンで簡単なスカートも作りました。100円ショップのレースのテーブルクロスやのれんなどを利用して作ると、安くて簡単で、子どもたちも大喜びのお姫様グッズができます。今は、素敵なドレスやなりきりセットみたいなものもおもちゃ屋で販売されていますが、高価なものを買わなくても、お母さんや保育者のアイディアと子どもの豊かな想像力があれば、身近なものでも、十分、遊びは盛り上がると思います。

私が、おもちゃをデザインする時は、まず、子どもの遊ぶ姿を思い浮かべます。
「あの時の遊びに、こんなおもちゃがあったら、もっと盛り上がるだろうな。」
「この時期の子どもだったら、こんな遊びに夢中になるだろうな。」
「こんなおもちゃだったら、繰り返し遊ぶだろうな。」

まず「子ども」がいて、「遊び」があって、それを助ける「おもちゃ」があるのです。私にしてみれば、「おもちゃ」は3番目です。
お店には、カラフルなもの・メロディーやメッセージのでるもの・多機能なもの・キャラクターをあしらったものなど、様々に子どもの目を惹くおもちゃが並んでいます。それが、悪いというわけではありません。ただ、主役は子どもだということ、おもちゃは子どもの遊びを助ける存在であるということは、忘れないでほしいなと思うのです。
「このおもちゃを与えたら喜ぶだろうな。」ということだけなく、「このおもちゃを与えたら、どんな遊びをするだろうか。」ということを、ちょっと考えてみることをお勧めします。
欲しがるからと、華やかなおもちゃをいっぱい与えて、結局、ちっとも遊ばない!なんてことにならないためにも。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」:http://yukkotoy.com/

第9回 遊び方にみる、子どもの育ち ?3歳から?

友だちへの関心が出てきて、言葉の数も増えてくる3歳前後から、気の合う「仲良し」のお友だちができ始めます。
2?3人の友だちと一緒になって「ままごと」する姿も見られるようになります。
一緒におままごと道具を並べたり、「お買い物」と称して手をつないで出かけていったり、「お母さんとお父さん」や「お母さんと赤ちゃん」などの簡単な役割もでてきます。

友だちとの仲が深くなっていくと、「イメージの共有」ができるようになっていきます。つまり、目の前に並ぶままごと道具だけでなく、その背景にあるもの、場面設定などのイメージの部分も共有しあい、遊びが膨らんでいきます。
「レストランごっこ」「ピクニックごっこ」「お店屋さんごっこ」「お医者さんごっこ」「幼稚園ごっこ」などのように、場面や役割を決めながら、遊びを勧めていけるようになっていくのです。
また、楽しそうな遊びは、新しい友だちを呼び寄せます。

4?5歳になると、数人の仲間で遊ぶ姿も見られるようになってきます。
アニメの「ポケモンごっこ」をするのだと、それぞれがポケモンになりきっていたり、女の子たちは「行くわよ!」「ええ、わたしが○○するわ」・・・など言葉遣いも普段とはうって変わって、みんなヒロインの顔つきになっていたりします。
「センセイも入って。」と誘われたこともありますが、その番組を知らない私には、とてもついていくことはできない世界でした。そんな私にも子どもたちは根気良く、「センセイはここで××していてね」と次にすることを教えてくれたものです。「ああ、こうやって、友だちとも遊びを作っていくんだなあ」と実感しました。

「○○ちゃんは、こうやってね。」とリーダーシップを発揮する子、「あっ、ねえ、△△っていうのはどう?」と次々にアイディアを出す子、にこにことみんなについていく子・・・・・いろいろな子がいますが、いろいろな子がいてこそ成り立っているのだと思います。

前回から年齢を追って、遊びの様子をお話してきましたが、これはあくまでも流れであり、目安の一つに過ぎないことを付け加えておきます。
5歳になったら、どの子も皆、毎日、数人の仲間と遊ぶというわけではありません。
一人の仲良しの友だちをとても大切にする子もいます。一人でじっくりブロック遊びや工作に取り組みたい時期もあります。
それもまた、大切な気持ちであり時間であるのです。
どうか子どもを一つの型にはめて、一喜一憂することのないようにお願いします。
ゆったりとした流れの中で、それぞれのスピードで、いろいろな力を伸ばしながら、子どもは育っていくのだと思います。
ただ、子どもにとって「遊び」はとても大切なものなのだということ、決して「時間潰し」などではないことを感じていただけたら幸いです。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
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第8回 遊び方に見る、子どもの育ち?3歳まで?

子どもは、そこに同じ年頃の子どもがいれば、すぐに仲良くなって、一緒にごっこ遊びを始められるというものではありません。
体や言葉の発達と同様に、遊び方も、0歳の頃から、だんだん成長・発達してくるものです。

年齢はあくまでも目安ですが、「ままごと」を例にとって、遊び方に見られる、子どもの発達を追ってみたいと思います。

1歳近くなる頃から、大人の真似をする「見立て遊び」が始まります。大人が、ままごと道具のコップを持って、「ゴクゴク」と飲む振りをしてみせると、子どももコップを持って「ンクンク」と飲む振りをするようになります。
もし、食事の時に、空のコップを差し出したら、「入れてちょうだい!」と身振りで訴える子どもが、遊びの時はうれしそうに空のコップを口へ持っていく・・・。小さいながらも、「遊び」ということを理解している証拠であり、「ままごと」の第一歩を踏み出した瞬間です。
私は、まだまだ赤ちゃんと思っていた子どもの、そんな人間らしい姿・仕草を見ると、本当に感動してしまいます。

「ままごと」は、このように「食べる振り」「飲む振り」から始まりす。
そのうち、「お皿を並べる」「お皿に食べ物を入れる」「どうぞと差し出す」など、お母さんがしてくれていることを、自分もやってみるようになります。「お母さん」という役割を演じるようになるのです。

この頃の「ままごと」は、自分一人であったり、大人対自分で進みます。近くで、同じ年頃の子どもが、同じように「お母さん」を演じていることもありますが、二人が積極的に一緒に遊ぼうとすることは、まだ少ないでしょう。「平行遊び」と呼ばれる時期です。
誰かが、お皿を並べて遊んでいる。おもしろそうだな・・・と、自分も隣でやってみる。保育園などでは、何人もの1?2歳の子どもが、ままごと道具を囲んでいる姿も見られます。でもそれは、「お母さん」「お父さん」「お姉さん」「赤ちゃん」・・・などの役割が決まった「ままごと」ではありません。一人一人が、みんな「お母さん」。それぞれが自分の中の「お母さん」のイメージで遊んでいます。
かと言って、周りの子どもに全くの無関心というわけでもありません。おもしろそうなことは真似してみる。時には一緒になってやってみたい・・・。だから、この時期は、おもちゃの取り合いなどのトラブルがよく起こります。
近くの友達の使っているおもちゃを、すぐに取ろうとする子。大人から見たら、「困った子」に見えるかもしれません。でも、ただ、周囲の友達に関心が強く、「真似したい。一緒に遊んでみたい。」という気持ちを行動に移しただけなのです。まだ、気持ちの伝え方を知らないだけなのですから、「困った子」と決めつけず、「○○ちゃんもやってみたかったんだね。」と気持ちを受け止め、同じようなおもちゃを見せ「ここにも同じのがあるよ。」と知らせたり、「貸してって言ってみようか。」と教えてあげればいいのです。
これも、遊びが発達していく一つの段階と言えるでしょう。

友達と関わりながら、「ままごと」をしようとするのは、3歳前後からでしょうか。
それ以前の子どもは、大人が良い仲介役となってあげれば、一緒に遊ぶこともできますが、それをせず、「ほら、仲良くしなさい。「一緒に遊ばなきゃ、ダメでしょう?」「うちの子、ちっとも友達と遊べない・・・」「いじめられているのかしら・・・」などと、言ったり悩んだりするのは、ちょっと早すぎるような気がします。
その子の遊びは、まだ、その段階にないのですから。

3歳前後の子どもは、自分の周囲の子どもに強い関心を示すようになり、一緒に遊びたいと思うようになってきます。もちろん、個人差は大きいものですが。
続きは、次回に。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
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第7回 ごっこ遊びの中で育まれるもの?まとめ?

ここまで、ごっこ遊びの中で育まれる、様々な「力」について、お話してきました。
今回は、まとめとして、実際に私が担任していた5歳児のクラスでのエピソードを紹介したいと思います。

5歳児(年長児)、26名のクラスでした。
12月の生活発表会で、劇遊びをすることになり、どんな劇にしたいか、みんなで相談しました。

「みんなが知っているお話がいい」
「できるだけ、たくさんの人・動物がでてくるお話がいい」
ということで、数多く出された候補の中から、「七匹の子ヤギ」と「シンデレラ」の2つをやることになりました。
一人一人、どちらか自分の出たい方のグループに入ります。
女の子の8割程が「シンデレラ」を希望しました。皆、自分こそシンデレラになれると夢見心地です。

いよいよ役決め。9人の女の子がシンデレラに立候補しました。
私「9人も、シンデレラにはなれないね。」
子ども達「お姉さんとか、魔法使いもいるよ。」「ナレーターだっているよ。」
私「どうする?」
子ども達「ジャンケン?」「うん、ジャンケン!」

9人で工夫してジャンケンをし、だんだん脱落していく女の子たち。でも、すぐに、
「じゃあ、私、ナレーターになるよ。」
「私、王子様にする。いつも、お姫様ごっこの時、王子様やってるから。」
「ねえ、先生、お姉さんも、舞踏会の時、ドレス着るよね?お姉さんにしようかな。」
などなど、シンデレラになりたかった気持ちを切り替え、自分の役割を見つけていきました。
正直、泣く子が出たり、もっと揉めたりするかも…と覚悟していたのですが、子ども達の心の成長を見せつけられた思いでした。
シンデレラ役の方は、最後にHちゃんとYちゃんの2人が残り、結局Hちゃんが 勝って、シンデレラ役を獲得しました。

ここで、私から一つの疑問を投げかけました。
「シンデレラには、魔法がでてくるよね。ボロボロの服がドレスになったり、か ぼちゃが馬車になったり。どうしようか。」
この時点で、私の中では、「パッと着替えのできる衣装を工夫するしかないかな…」くらいの気持ちだったのですが、一応、このワクワクするような大問題を、子どもたちとも共有してみたかったのです。
すると、N君から、意外なアイディアが出てきました。
N君「誰かがボロボロの服をきていて、パッとドレスのシンデレラと交代するっていうのは?例えば、2番だったYちゃんがボロボロ服を着てさ、ドレスのHちゃんとチェンジするの。」
私「ああ、確かに。それだと、魔法らしく見えるかな?」
子ども達「見える、見える!」
でも、肝心なのは、Yちゃんの気持ちです。一度はあきらめたシンデレラ。しかも、あこがれていたドレスは着られず、ボロボロの服だけなんて。
私「Yちゃん、どうする?シンデレラだけど、ドレス着られないんだよ…。いやだったら、ほかの役でもいいんだよ。」
Yちゃん「いいよ。Y、やるよ。」
N君のアイディア、そして、Yちゃんの決断。周りのこどもたちの温かい雰囲気も含めて、私は感動していました。

この出来事自体は、純粋な意味での「ごっこ遊び」からは、ちょっとはずれているかもしれません。でも、「想像力」「問題解決の方法」「自己コントロール」
などなど、毎日の遊びの中で育まれた一人一人の力が発揮された、素晴らしい場面でした。この子ども達を私は、心から誇りに思いました。

後日談があります。
劇の練習が始まり、その様子を見た他のクラスの先生から、「Yちゃん、あれでいいの?」と心配されました。
私は、事の成り行きを説明し、Yちゃんは、2番目のシンデレラとして、納得してやってくれていることを話しました。
実際、いつもは元気一杯、大きな声のYちゃんが、劇の時は、うつむき加減で
「はい、お母様…」「はい、お姉さま…」
と弱々しい声で話すのです。ぼろをまとったYちゃんが、いじめられるシンデレラになりきっているのです。
でも、同じ心配は、他の大人が見れば、きっと誰もが抱くことでしょう。
私は、職員会議で、他の先生達にも、子ども達の成長した姿だと、とらえてもらえるよう、説明しました。
そして、何より、Yちゃんのお母さんにも!
私が話した時、お母さんはすでにYちゃんから大体事情を聞いていたようで、笑顔で納得してくれました。

そして本番。
魔法で、大柄なYちゃんシンデレラから、小柄なHちゃんシンデレラに変身した
場面は、場内からの温かい笑い声に包まれました。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
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第6回 ごっこ遊びの中で育まれるもの?その6?

前回、「順番」や「ジャンケン」など、子供の世界の「問題解決の方法」について、お話しました。

でも、そこは子ども。欲しいものは欲しい。イヤなものはイヤなんです。
泣きます。暴れます。はたまた石のように塊ります。
そこを脱する力が、「自己コントロール」する力です。

友達との遊びが楽しくなってくるのは、2?3歳頃からです。
この時期の男の子たちは、「○○レンジャー」などのヒーローごっこが大好きです。変身ポーズも格好良くキマリ、なりきって遊びます。
A君「ぼく、レッド!」
B君「ぼくも、レッド!」
仲間遊びを始めたばかりの「○○レンジャー」にはレッドが、3人も4人もいたりするものですが、それでOK!何の問題もなく、遊びは成り立っています。
ところが、少し年齢が上がってくると、「レッドは1人」という事実に気付き始めます。
テレビのレッドは1人なのだから、ぼくたちのレッドも1人だけ。ブルーだって、イエローだって、いなくちゃ「○○レンジャー」になれない。おかしい!

A君「ぼく、レッド!」
B君「ぼくも、レッド!」
以前と同じセリフで、今度はケンカが始まってしまいました。
せっかく、楽しく遊ぼうと思ったのに、ケンカしているうちに、もう遊ぶ気持ちなんてどこかへいってしまいます。

A君のことは大好きなのに、一緒に○○レンジャーしたいのに、できなかった・・・・・

とても悲しい出来事です。
こんな失敗を繰り返した後、ある時

A君「ぼく、レッド!」
B君「A君、レッドだね・・・ぼく、ブルーにする」
レッドになること(自分の要求を通すこと)と、大好きな友達と遊ぶことを考えて、友達と仲良くする方を選んだのです。
B君の、レッドも大好きだけど、A君も大好きという想いが、自分の要求・感情をコントロールする力を生んだのです。

レッドを譲られたA君も、「あれ?」と気付きます。
B君、今日はレッドじゃなくていいんだ。ぼくにやらせてくれるんだ。うれしいな。

この体験が、今度はA君の、友達が大好き、友達を大切にしたいという気持ちを育てます。
もうすぐ、A君がB君のために、何か譲ってあげたり、かばってあげたりする場面も見られることでしょう。

友達との楽しい遊びと、お互いの要求がぶつかりあってのケンカ。
ごっこ遊びは、この繰り返しの上に成り立っています。
そんなごっこ遊びを積み重ねることで、友達を大切にしたい、やさしくしたい、喜んでもらいたいという気持ちが芽生えます。この気持ちこそが「自己をコントロールする力」の糧となるのです。

大人は、「ケンカは悪いこと」と決めつけて、すぐに決着をつけさせたり、謝らせたり、見せかけの仲直りをさせようとしてしまいがちです。また、年齢が上がれば、大人の「謝りなさい」「貸してあげなさい」「我慢しなさい」といった言葉で、言う通りにできるようになるかもしれません。
でも、これでは、本当の意味で、「自己」を「コントロール」したことにはなりません。

子どもの内側から、にじみ出てくるような「自己コントロール」する力。
これこそ、子ども同士のごっこ遊びの中で育まれるものと言えるのではないでしょうか。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
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第5回 ごっこ遊びの中で育まれるもの?その5?

友達との間でトラブルが起きた時、まず「言葉によるコミュニケーション」での解決が大切だということは、前回お話しました。
今回は「問題解決能力」の中の「解決の方法」について、お話します。

例えば、おもちゃや遊具の取り合いになった時、どんな「解決の方法」があるでしょうか。

まず、「早いもの勝ち」。
子どもの世界の原則は、これだと思います。
でも、一人の子が、ずっとそのおもちゃや遊具を占領していたら、トラブルはまた始まります。

「○○ちゃんばっかり、ずるい!」
「貸してって言っても、貸してくれない・・・」
そこで今度は「順番」という方法がでてきます。
「次に貸して。」
「うん。あとでね。」
少し大きい子になると、
「10数えたら、交代して。」
など、時間を区切って交代しようと提案したりもします。

それから、どうしても決着がつかない時には、「ジャンケン」という方法もでてきます。
「ジャンケンで決めよう。」
「うん。いいよ。」
「ジャンケンポン!」
負けた子「やっぱり、三回勝負にしよう!」

そんな知恵(?)もついてきたりもしますが、何とか公平に、お互い納得できる方法を、子ども同士考え合って、トラブルを解決しようとします。

だから私たち保育者は、子ども同士でトラブルが起こっても、すぐには間に入ってはいきません。耳をダンボにして、横目でチラリチラリ成り行きを見守っています。
「言葉」で「方法」を探りあう子どもたちを、私は素晴らしいと思うのです。

時には、一方的で、あまり公平とは言えない方法にたどり着くこともあります。
大人は一言言いたくなってしまう場面ですが、双方が本当に納得できているのなら、その場はそれでいいのではないかと、私は思います。
それが子どもの世界ですし、因果応報、有利だった子が、逆の立場に立たされる場面もきっと訪れるのですから。
長い目で見て、平等・公平・譲り合いということを学んでいければいいわけです。

ただし、その場合、不利な結末を迎えた子の様子は、しっかりと見届ける必要はあります。
平気そうなら問題はないのですが、不服そうだったり、悔しそうなようすが伺えたら、さりげなく
「どうかした?」
と声をかけます。
満があるようなら、気持ちを汲んで、助け舟を出します。
相手の子に
「△△君は、本当は悔しいみたいだよ。もし、あなたが、そうされた
ら、どうかな?」
ともう一度、その方法について考え直すよう促したり、
「こんな方法もあるよ」
とアドバイスをすることも必要だと思います。

自分たちで考え、時に大人の助けを借りて、子どもたちは、場面に合った公平な「問題解決の方法」を学んでいくのです。

でも、いくら公平な方法が提案されても、どうしても譲れず、泣いたり、強情を 張ったりして、うまく収まらないこともあります。
そこで、次の「問題解決能力」の一つ「自己コントロール」の力が必要になってきます。

このお話は、また次回に。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

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第4回 ごっこ遊びの中で育まれるもの?その4?

今回からは、「問題解決能力」のお話です。

私たち大人が、子どもたちを育てていく上で、最終的に身に付けさせたいのが、この能力だといっても過言ではないかもしれません。

「問題解決能力」には、
「言葉によるコミュニケーション」
「解決の方法」
「自己コントロール」という、3つの側面があると考えます。

子ども同士の遊びにトラブルはつきものです。
まして、「ごっこ遊び」は、その設定や配役、ルールまで、子供同士で作り上げていく遊びですから、その過程で は、当然、数々のトラブルが起こってきます。

そのトラブルを通して、周囲の助けを借りながら乗り越えていく過程で3つの力が身についていくのです。
まず、「言葉によるコミュニケーション」です。

3歳位になると、日常会話は、子ども同士でも、かなり成り立つようになってきます。
しかし、いざという時になると、言葉にならないというのもよくあることです。

友達の持っているおもちゃが欲しくて、「貸して」と言えず、無理やり取ってしまう子・「いやだ」と言えず、黙り込んでしまう子・自分の思い通りになるまで、泣きわめく子・・・・・等々、珍しい姿ではありません。

そんな時、大人のちょっとした手助けがあると、子どもは、その場面に必要な言葉を身に付けていきます。

「『貸して』って言おうね」
「いやな時は『いやだ』って言っていいんだよ」
「悪いことしちゃったから『ごめんね』って言おう」

その他にも、
『後で貸してね』
『ちょっと待っててね』などの言葉もあります。

初めは、うまく「言葉」で解決できなかった子どもたちも、「たたいたら、泣かれちゃった。でも、『ごめんね』って言ったら、仲良くなれた」とか、「『いやだ、いやだー』って言ってたら、だーれもいなくなっちゃった。でも、怒らないでお話したら、ずっと一緒に遊べて楽しかった」といった経験を繰り返し、友達と楽しく遊ぶのには、「言葉」で伝えるのが大切だと気付いていきます。

そして、5?6歳になった子どもたちは、もっと複雑な気持ちや、事の成り行きを言葉で表現することができるようになっていきます。

「私、本当は、赤ちゃん役がよかったんだよ。でも、毎日、赤ちゃんばっかりでずるいって、○○ちゃんが言うから、今日はやめたんだよ。」
「さきに△△君が使ってたボールなんだから、返してあげなよ。」
など、ただ泣くだけでは、ただ奪ってしまうだけでは、解決しないことを、子どもたちは、ちゃんと学んでいるのです。
次回は、「問題解決能力」の中の「解決の方法」について、お話します。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

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第3回 ごっこ遊びの中で育まれるもの?その3?

前回は、「物」に対する「想像力」のお話をしました。
今回は、「人」に対する「想像力」=「思いやりの心」のお話です。

「ごっこ遊び」では、皆、自分以外の誰かにならなければなりません。その時、子どもの「人に対する想像力」がフル回転するのです。

お母さん役になった時、「ごはん、残さないでたべるんですよ。」と言います。
普段、自分が言われているセリフですが、自分がお母さんになって、お料理を作って、子どもたちに食べさせる時は、自然とお母さんの心になって「一生懸命作ったごはん、ちゃんと食べて欲しいな」と思って言うのです。
また、ヒーロー役・悪者役になって戦っている男の子たちだって、遊ぶたび、両方の役をやってみるからこそ、「やられっぱなしは、悔しいな」とか「本気でやったら、痛すぎるな」など、相手役の気持ちや立場を想像し、力の加減もできるようになっていきます。

「ごっこ遊び」の中で、いろいろな役になりきって、体験することで、子どもは少しずつ、相手の立場に立って「自分だったら、こう思うだろうな」と相手の気持ちを考えられるようになっていきます。

自分以外の人になる。
その為の「想像力」とは、すなわち、「自分以外の人の心に近づく」=「思いやりの心」なのです。

大人でも、立場の違う相手に真の「思いやり」を示すのは、簡単なことではありません。
でも、素直な子どもの心のうちに、いろいろな役になりきれる「ごっこ遊び」をたくさん経験し、広い思いやりの心が育まれるといいなと思うのです。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」:http://yukkotoy.com/

第2回 ごっこ遊びの中で育まれるもの?その2?

前回は、「ごっこ遊び」で「イメージの共有」=「コミュニケーション能力」が自然に育まれるというお話をしました。
つぎに、育つ力は「想像力」=「思いやりの心」です。

「想像力」には2種類あると考えます。
一つめは「もの」に対する「想像力」」です。

子どもは、たった1枚の風呂敷でも、自在に変化させて遊ぶことができます。
腰に巻きつければ、ロングスカートになります。
頭にかぶれば、ロングヘア気分にもなれます。
巧みな風呂敷使いで、すっかりお姫様気分の女の子たちは、歩き方・喋り方まで上品になってしまいます。

また、園庭でのままごと遊びでは、自然物が様々なものに変化します。
「せんせー、ごはんできたよ。来て?」と呼ばれていってみると、とても豪華な食事が並んでいます。
砂と小石を混ぜて、器に盛った「栗ごはん」
葉っぱやお花を盛り付けた「サラダ」
小枝に葉っぱを数枚刺して「焼き鳥」
「ケーキ」には、花の種やどんぐりの「フルーツ」が飾られ、葉っぱの「チョコ」に小枝の「ろうそく」が立っています。
小枝2本を揃えて、お箸まで用意してくれてあるのです。

たとえ、立派なままごとセットがなくても、子どもは「想像力」を存分に働かせて、素敵な「ごっこ遊び」ができるのです。
二つめは「人」に対する「想像力」です。

これは、また次回にお話したい思います。

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元保育士の「ゆっこせんせい」が12年の保育経験を活かして、子供たちとの遊びの中で気づいたこと、発見したことなどを中心にお届けしていきたいと思います。

<さとうゆきこ>
筑波大学心理学専攻、中退。92年、私立保育園就職。勤務しながら、保育士資格取得。0歳?5歳の各歳児の保育に携わる。04年、退職。現在は、HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」にて、オリジナル手作り布おもちゃを発表し、布おもちゃの素晴らしさを伝えるべく、活動中。7歳と9歳の男の子の母でもある。
HP「ゆっこせんせいのおもちゃ箱」:http://yukkotoy.com/