子どもが犯罪に巻き込まれるのは、抵抗力がない未就園児や幼稚園児、小学校低学年の児童に多いと思っていないだろうか。だが実際は、中学生、高校生と、成長とともに、その犯罪被害件数は飛躍的に多くなる。これは小さい頃は大人が守ってくれているが、自立し、一人で行動する範囲が広がるにつれ、危険性が増していることを意味している。
しかしながら、子どもは自立していくもので、またそうでなくてはならない。その時に備え、今の私たちにできること…。中山先生は一段と声を大きくされた。
「お母さん方、今はまず、お子さんの心を育ててください」
『心』…?少し唐突な印象で驚くが、中山先生は更に続けられる。
「昨日、お子さんにどういう風に声をかけましたか?お小言ばかりじゃなかったですか?」
中山先生の問いかけに、会場がどよめく。きかん坊盛りの園児のお母さんたちには少々耳が痛いお話だ。
「親の愛情は、背中では伝わらないんですよ、言葉、言葉をかけることが大事なんです」
たくさんの犯罪事例と向き合い、数々の少年犯罪を研究されてきた先生である。たくさんの事例の中から、犯罪行為を行いやすい、受けやすい子どものタイプが見えてくる中で、私たち園児の母が今何をすべきか、はっきりと指摘された。
「親、または親に準ずる人に愛されている、大事にされている、そう実感することで、子どもは自分の存在への確信を持つ。そうした愛情溢れる環境で育った子どもは、犯罪被害に関わる可能性が低いのです」
中山先生の言葉に、昨今の少年犯罪について思いめぐらす。そうした事件は必ずと言っていいほど、家庭環境に何らかの問題があることが指摘されている。親が常に見守り、大きな愛情で包むこみ育てることが、将来、子どもを犯罪から守る。思えば至極当然のことなのだ。
また、こうして大人に愛情深く見守られた子どもたちは、万が一、避けられない犯罪被害に遭った場合でも、それにめげることなく、逞しく立ち直ることができるという。その心の力を育てることが、今、4〜8歳の子どもを持つ親にとって、子どもを犯罪から守るために最も大事な事だと、中山先生は力強くおっしゃった。 |